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Tokyo Stillness
See Tokyo, differently.

History, Culture & Artisans 2026.08.21

一瞬で消える光に、職人の時間が宿る。花火師が語る、日本の花火の美しさ

執筆:松井直之(編集部) 写真:丸玉屋小勝煙火店提供

夜空に開き、数秒で消えていく花火。その一瞬のために、花火師は何か月も前から火薬を配合し、星を育て、色や形を設計しています。丸玉屋小勝煙火店の5代目・小勝康平さんに聞いたのは、華やかな光の裏側にある、長い時間と静かな仕事。花火を通じて、日本の美意識を見つめます。

花火は、なぜ日本の夏を象徴するのか

日本の夏を思い浮かべるとき、花火の光を思い出す人は少なくありません。浴衣、夜風、川沿いの人混み、遠くから響く音。花火は、単なるイベントではなく、夏の記憶そのものとして心に残ります。

その一方で、夜空に開く花火の裏側を知る機会は多くありません。一発の花火がどのように作られ、どれほどの時間をかけて準備されているのか。見上げているだけでは、なかなか想像できないものです。

東京の花火文化を支えてきた老舗のひとつが、丸玉屋小勝煙火店です。伝統的な日本の花火づくりを受け継ぎながら、音楽と連動した演出や都市型の花火イベントなど、現代の鑑賞スタイルに合わせた花火表現にも取り組んでいます。

今回話を聞いたのは、代表取締役社長で5代目の小勝康平さん。小勝さん自身が花火師の仕事に惹かれたのは、18歳で初めて打ち上げ現場に立ったときでした。

「外から見ていた花火が、目の前から打ち上がり、真上で開く。その体験が、花火の世界へ入るきっかけになりました」

数秒の光は、何か月もの準備から生まれる

花火師たちの仕事は、花火大会の当日だけではありません。毎年開催される大会であれば、打ち上げが終わった翌日から、すでに次の年に向けた準備が始まります。

「急に『明日打ち上げて』と言われても、それはできません(笑)。やっぱり何か月も前から準備が必要です」

その準備の中心にあるのが、「星」と呼ばれる火薬の粒をつくる工程です。星は、花火が開いたときに色を生む部分。赤、青、緑、金、銀。色ごとに配合があり、大きさも用途によって変わります。

「星を作る作業は、本当に時間がかかります。だから、その作業はずっと続けています」

一玉をつくるのに何日かかるのか。よく聞かれる質問だといいますが、小勝さんは「一概には言えない」と話します。星を作り、玉を割るための火薬を作り、玉に詰め、紙を何重にも貼って強度を出す。その工程が、常に重なり合いながら進んでいるからです。

夜空では数秒で消える花火。その一瞬の奥には、何か月もの準備と、職人たちの日々の手仕事が含まれています。

花火玉の中には、夜空の設計図がある

花火玉の構造を示す模型。星の位置や層の重なりが、夜空に開く形を決めていく。

花火の形は、偶然ではありません。玉の中にどの星を、どの位置に、どの順番で詰めるか。その設計が、そのまま夜空の形になります。

「基本的には、玉の中の星の形が、そのまま広がっていくようなイメージです。ハートの花火や笑顔の花火も、平面にその形で並べておけば、上空でそのままの形に開くという理論です」

理屈だけ聞くと、シンプルです。けれど、作業は極めて繊細です。

「玉の中で1センチずれると、上空では何十メートルものずれになります。だから、芯も星も、本当にまん丸にしないと、そのままの形で広がっていかないんです」

夜空で数秒だけ開く花火の奥には、長い時間と、目に見えない精度が詰まっています。花火玉は、ただ火薬を詰めたものではなく、夜空に描くための設計図でもあるのです。

日本の花火は、一発の完成度を見つめてきた

海外にも花火はあります。独立記念日やカウントダウンのように、祝祭やショーの演出として、大量の花火を一気に打ち上げる文化もあります。一方、日本の花火は、一発の完成度を突き詰めてきた文化だと小勝さんは話します。

「量では勝負できないんです。日本の花火業者は、小さなところだと家族でやっている会社もあります。だから、たくさん作って打ち上げるというより、一発をすごくいいものにして見てもらう。そういう方向に進んできたのが、日本の花火だと思います」

そして、花火師にとって何より大切なのは、「安全に打ち上げること」だと小勝さんは話します。観客にとって花火は、美しさや驚きの体験。けれど花火師にとっては、安全に上がり、誰も傷つかず、無事に終わること。その責任の上に、美しさが成り立っています。

花火の余韻を、バルコニーで味わう

初めて日本の花火を見る海外のゲストには、できれば会場で見てほしいと小勝さんは話します。

「遠くから、あ、花火が上がっているなと見るのももちろんいいと思います。ただ、花火は会場の人たちが一番見やすいように設計されています。花火を見るために行動してもらうと、全然違うと思います」

ヒルトン東京お台場の客室には、東京湾に向かって開かれたバルコニーがあります。冬の時期には「お台場レインボー花火」が行われることもあり、客室からその光を眺められる日があります。
さらに2026年10月24日には、「東京湾大華火祭 2026」が約11年ぶりに復活。東京湾に面したヒルトン東京お台場に滞在すれば、花火のある夜をより身近に感じられるはずです。 

花火師の仕事を知ると、バルコニーから見る一発の見え方も変わります。夜空に開く光の中に、何か月もの準備があり、職人たちの存在があり、「安全に上がってほしい」という願いがある。

ヒルトン東京お台場で過ごす夜に花火の光が重なったなら、それはただの眺望ではなく、東京の文化に触れる時間になります。

丸玉屋小勝煙火店

 


 
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